ちょっと役立つ歯科豆知識を…
こんにちは「まめ歯科」です。
前回は歯の内部をメインに、レントゲンでみているところをご紹介しました。
今回は歯科におけるレントゲン検査PART2ということで、歯根しこんという歯の根の部分にスポットをあててレントゲンで何をみているのかをまとめていきます。
歯根とは?
はじめに、歯がどのように生えているかを簡単に見ていきます。
歯は歯ぐきの上にちょこんとのって生えているわけではなく、歯の根が骨に植わっていることでどっしりと生えています。

歯の根が骨に植わっている…🤔?
イメージしにくいですが、ここは植物🌴をイメージすると分かりやすいかもしれません。
植物の根に相当するのが、歯でいうところの歯根しこんということになります。
植物でみると、根がひょろひょろだったり、根が土に少ししか埋まっていないものはすぐに抜けてしまいます。
歯も同じです。
しっかりした歯根を持ち、土の役目となる骨の量が十分にある場合はしっかりした歯という評価ができます。
しっかりした歯とは言えない状態…🤔?
一体どういう状態なのか思う方もいらっしゃると思います。
例えば乳歯(子どもの歯)で考えてみましょう。
乳歯は生え変わりの際にグラグラし、最終的には抜けていきます。
グラグラするのは、歯根の部分が吸収されてなくなってしまうからです。
多くの方は、この抜けた乳歯(歯根が吸収された状態)に見慣れているため、歯根という存在のイメージがつきにくいのかもしれません。
抜けた乳歯も実は過去にはしっかりした歯根があり、それが時間とともに吸収されたものになります。
いつまでも歯根が吸収されないと永久歯が生えてこなかったり、大人になっても乳歯が残っているという状態になります。
また、成人で多くなる歯周病において、歯がグラグラしてしまうというのは根はあっても歯を支える骨がなくなってしまっているからです。
歯根と歯を支える骨がどれだけ大切かが、この二つを考えただけでも分かりますね。
そしてこの大事な部分もやはりレントゲンでないと確認ができない!ということにお気づきでしょうか…
さて、少し話がずれましたがこの歯根…
前歯や奥歯などの歯の種類によって形が随分かわってきます。
例えば、前歯ぜんし、犬歯けんし(糸切り歯)は1本だけの歯根(単根たんこん)をもつものが大多数を占めます。
稀ですが、前歯でも2根のものもあります。
奥歯では3根のことが多く、多いものだと4根という場合もあります。(複根ふくこん)
親知らずも含めると奥歯でも1根から4根と決まっているわけではなく、とてもバラエティに富んだ形をしています。
そしてこの歯根、まっすぐであれば治療もしやすく歯科医師にとってもありがたいのですが…ゆるいカーブを描いている形のものが大部分を占めます。
虫歯が大きかった時や、歯の欠ける範囲が大きかった時、歯にヒビが入ってしまった場合など、歯髄しずいという歯の神経部分に細菌感染が起きてしまった時は根の治療(根管治療こんかんちりょう)が必要となります。
いわゆる神経をとる治療です。感染している歯髄を取り除く必要があるので1〜4根の処置が必要になってきます。
この根管治療のために根の数や形を確認することが必要になるのです。
ただし、歯根は歯ぐきと骨に覆われているので肉眼では確認できません。
このためレントゲン検査が必要になってくるのです。
歯根の何をレントゲンでみるのか
①歯根の形やカーブ具合をみる
②根管治療で用いたお薬の状態をみる
③歯根が割れていないかみる
④歯根が破壊されていないかみる
歯根の形やカーブ具合をみる
レントゲンを撮ると、上に挙げたように歯根の数や歯根のカーブ具合を把握することができます。
抜歯や根管治療(根の治療)、矯正治療、移植(抜いた歯を別の歯がないところに移植する)などなど…多くの歯科治療において根の形を把握することは大切になってきます。
たとえば、抜歯をした際に中々抜けてこない場合は歯根のかたちが抜けにくい形になっていることもよくあります。
この場合は抜けるように分割するなどして対応します。
抜けにくい歯、治療が難しい歯は複根(2根以上)の場合が多く、レントゲン検査では根が重なって写ってきてしまうことも多々あります。

重なってうつるって…写真がブレるような感じ?
突然の登場のミケさんですが、ミケさんの言う通りです。
重なりがあるとレントゲン写真ではモヤモヤと写ってしまい、はっきりとその輪郭を確認することが難しくなります。
この場合はレントゲン撮影時に撮影角度を変えた方法を追加撮影していくなど対応して、みたい歯根を写していきます。

前、痛かった一本の歯を撮るだけなのに何回もレントゲン写真撮られたのはそれか〜
確かに色んな方向に機械を動かしていた!
このように角度を変えて撮影することはよくあります。
それでも判断が難しければCT写真をとり、立体的にみていくこともあります。
歯は3次元構造ですが、レントゲン写真は2次元のものです。
このためレントゲン検査だけでは限界があり、情報として不十分なことも多々あります。
根の治療中や歯を抜く際に、根の構造をしっかり診るためCT撮影をしたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
これは複雑な根の形を把握するためです。
根管治療のお薬の状態をみる
何度か既に出ていますが、歯髄(歯の神経)に細菌感染があった場合などは根管治療が必要となります。(根管治療についてはまたあとで記事にしてきます。)
簡単に言うと根管治療は歯の痛みや腫れの原因となる細菌を消毒して細菌の数を減らす治療です。
細菌感染していた歯髄を全て取り除きますので、歯髄が入っていた部分は治療後は空洞(歯髄腔しずいくう)になります。
歯髄腔が空洞のままだと、このスペースに細菌がまたどんどん増えてしまい再感染してしまいます。
そうなると…痛みや腫れをぶり返す原因となってしまいます😱
歯髄を取り除き、空洞になった歯髄腔を埋めていく処置が必要になります。
この埋めていく処置が根管充填こんかんじゅうてんです。
このときに用いる材料を根管充填剤こんかんじゅうてんざいと言います。(通称:根充剤こんじゅうざい)
根充材は色々な種類があり、クリニックによって用いられているものが異なります。
しかし、わざとレントゲンに写るようした(造影性を持たせた)材料を用いるということは共通です。
これにより、根管治療が完了している歯なのかも判断することが可能となり、根の治療の評価もすることができます。
根充材がしっかり根の先まで届いているか、隙間はないか、材料が多すぎて溢れていないか…
これも見えないところを可視化しているものの一つになります。
見えないところを可視化することが歯科ではいかに大切かが分かります。
歯根が割れていないかをみる
ちょっと恐ろしいタイトルです😱
歯根が割れる?!
想像しにくいことですが。
歯根破折しこんはせつという名のこの現象は、残念なことによく起きてしまうものの一つです。
強い力がかかりすぎた時などに歯根が割れてしまうことがあるのです😱
しかし、神経のある歯(生活歯せいかつし)で歯根が割れてしまうことはあまり多くありません。
神経を取り除いた後や、自然に神経が死んでしまった歯(失活歯しっかつし:根管治療が終わった歯)で歯根が割れてしまう頻度が高いのです。
ここについても詳しくはあとで記事にまとめます。
歯根が割れてしまうと噛むたびに痛みがあったり、歯ぐきが大きく腫れ上がったり何かしらの症状がでてくることが多いです。(全く無症状でレントゲンでたまたま発見されることもあります)
そのほとんどは抜歯の対象となります😱
接着技術を用いて、割れている歯でも保存を試みているクリニックもありますがあまり多くはありません。
歯根が割れた方向によっては全く割れていない(レントゲンで写らないだけ)ように写り、診断を難しくすることもあります。
「噛むと痛い」 「歯ぐきが腫れた」という訴えはとても多いものなので、歯根が割れていないかどうかをみることが診断にも役立ってくるのです。
歯根の破壊がないかみる
上記の「歯根が割れていないかみる」と同じような内容の気もしますが、すこし異なります。
割れるのではなく、原因不明に歯根が吸収されていってしまうものです😱
外部吸収、内部吸収とされているもので、稀ではありますがレントゲンでたまたまみつかることがあります。
症状がないものがほとんどです。
イメージしにくいですが、乳歯の歯根がとけてなくなっていく現象に近く、あったはずの歯根が部分的になくなっていくような…そんな状態です。

説明が下手でわかりにくい!
…すみません…いつかまとめたいのですが…とりあえずミケさん、、、
今は外部吸収、内部吸収で検索していただければと思います…🙇♂️
このように、歯根だけをピックアップしてもみるべきところが多いというのが何となくお分かりかと思います。
前回とりあげた歯の内部や今回の歯根…一枚のレントゲンから得られる情報はとても多く、レントゲン写真の大切さがよく分かります。
しかし、まだこれで終わりではありません。
レントゲンでは骨の状態もみることができます。
次回は骨の状態にスポットをあてていきます。
【今回記事のまとめ】
歯根の形や数は歯の種類や患者さんによって千差万別で、レントゲン検査をしなければそれを把握することはできない。
歯根の形や数を把握することは歯科治療では必須になる。
2次元のレントゲンでは全てを把握するのに限界があるため、追加でCT撮影が必要になることもある。
歯根もトラブルが起きることがあるのでレントゲンでしっかり状態を確認することが必要。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コメント